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立つ鳥跡を濁さず!退職時に必要な手続きや注意点、マナーとは?

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12分

立つ鳥跡を濁さず!退職時に必要な手続きや注意点、マナーとは?

相山 華子(あいやま はなこ)

相山 華子(あいやま はなこ)
1997年慶應義塾大学卒業後、山口放送株式会社(NNN系列)のテレビ報道部記者を経て、2002 年からライターとして活動。各種ウェブメディア、企業広報誌などで主にインタビュー記事を担当するほか、外資系企業の日本語コンテンツ監修も手掛ける。

さまざまな事情から、退職することが決まったら、現在の勤務先を円満に退社することが必要です。退職には想像以上にいろいろな手続きが必要です。順序良く確実に手続きを済ませて、去り際の印象をよくしましょう。ここでは退職に必要な手続きや注意点、社会人として守るべきマナーについて解説します。

CONTENTS

 退職を決めたら、
まず何をすべき?

口頭で伝える?退職願いと退職届は?

退職を決めたら、まず、会社側に退職の意思を伝えます。この場合、いきなり退職届を出すのではなく、まずは直属の上司に、あるいは派遣社員や業務委託契約社員であれば派遣元/雇用元の営業担当者/責任者に、口頭で退職の意思と退職の時期について相談したい旨を伝えましょう。その後、書面で退職願いを提出し、承諾されたら退職届を出す流れになるのが一般的です。退職届については、会社側のフォーマットが定められている場合も多いので、自分で準備する前にフォーマットの有無を確認しておくとよいでしょう。

退職の意思を伝えるタイミング

退職の意思を伝えるタイミングについては、各企業が定める就業規則の内容に従います。就業規則の内容は企業によって異なるので一概には言えませんが、退職の1か月前までに申し出ることとしている企業が多いようです。なお、民法では「退職を申し出てから2週間が経過すれば、企業側の承諾がなくても退職することができる」旨が定められていますが、一般的に民法の規定は任意法規(法律について一定の定めはあるものの、その法律と異なる合意や定めをした場合、その合意や定めが優先される規定)とされているため、各社の就業規制の定めが優先されます。

いずれにせよ、退職までの日数が短いと、後任者の選任や業務の引継ぎが困難になり、同僚や上司に迷惑をかけてしまいます。退職を決めたらなるべく早く申し出て、本人にとっても周囲にとっても無理のないスケジュールで円満に退職の日を迎えられるようにしたいものです。

退職の申し出をする際の注意

なお、退職の申し出をする際には、相談口調にならないように注意しましょう。しっかり退職しますという意志を伝えないと、まだ迷っているのかと捉えられ、退職を引き止められるなど、面倒なことになりかねません。また、退職の理由は、あくまでも転職や結婚など個人的かつ前向きな理由とすることも大切です。会社への不満を理由にすると心証が悪くなり、周囲との関係がぎくしゃくしたまま退職の日を迎えることになります。

退職後に必要な手続き

退職日が決まったら、会社の人事・総務担当者の指示に従って、退職に必要な事務手続きを行います。手続きは「すぐに転職先で働き始める方」、「転職は決まっているけれど入社まで期間が空く方」、「転職先が決まっていない方」によって異なります。自分がどれに当てはまるのかを把握した上で、着実に手続きを進めましょう。

健康保険関連の手続き

健康保険は、病気やけがをしたときや、休業、出産、死亡といった事態に備える公的な医療保険制度です。公務員や企業に勤めている会社員、条件を満たす短時間労働者(アルバイトやパートなど)は、社会保険(社保)に加入し、自営業者や年金受給者は国民健康保険(国保)に加入します。会社員の場合、健康保険料は毎月の給与から天引きされる形で納めているため、退職する際には所定の手続きが必要になります。具体的な手続きは、退職後にすぐに働き始めるか否かで次のように異なります。

 すぐに転職先で働き始める場合

原則として、転職先の企業の担当者が必要な申請を行うため、自分で手続きを行う必要はありません。ただし、退職する会社から交付されていた健康保険証は使用できなくなるので、退職日までに返却しなければなりません。

 退職後の転職先が決まっていない場合・転職先で働き始めるまで期間がある場合

原則として、退職後14日以内に健康保険を「国民健康保険」に切り替える手続きが必要です。現住所のある市区町村役場の窓口へ行き、退職した会社で発行された「健康保険資格喪失証明書」など、健康保険の資格喪失日がわかる証明書を提出して手続きを行います。また、諸条件をクリアしていればこれまでと同様の健康保険を最長2年間、任意継続することができる健康保険任意継続制度があります。ただし、この場合、保険料は全額自己負担となります。そのほか家族の健康保険に入る(被扶養者になる)という方法もありますが、扶養に入るためにはいくつかの条件をクリアする必要があります。

 年金関連の手続き

日本の年金制度は20歳以上60歳未満のすべての方が加入する国民年金(基礎年金)と、会社員や公務員が加入する厚生年金保険の2階建て構造で、会社員や公務員は国民年金と厚生年金、2つの年金制度に加入することになっています。会社員の場合、年金の保険料も給与から天引きする形で納めているため、退職する場合は所定の手続きが必要です。

すぐに転職先で働き始める場合

健康保険の手続きと同様、転職先の企業の担当者が手続きを行うので、一般的には本人が自分で行う手続きはありません。

退職後の転職先が決まっていない場合・転職先で働き始めるまで期間がある場合

退職から14日以内に市区町村の窓口に行き、厚生年金から国民年金に切り替える手続きを行います。手続きの際には年金手帳と、離職票など退職日が確認できる書類が必要です。

企業型確定拠出年金の手続き

退職前に企業型の確定拠出年金(DC)に加入していた場合は、所定の手続きを行う必要があります。手続きの内容は、転職先の企業に確定拠出年金制度があるかどうかにより、次のように異なります。

転職先に確定拠出年金制度がある場合

転職先の確定拠出年金制度に年金資産を移管します。転職先企業の担当者の指示に従って手続きを行います。

転職先に確定拠出年金制度がない場合

退職後6か月以内に個人型確定拠出年金(iDeCo)の口座を開設して、確定拠出年金の資産をiDeCoに移換します。

 失業手当は誰でももらえる?

失業手当とは

原則として会社員は在職中、雇用保険に加入しています。雇用保険は万が一働けなくなったときに失業給付金(失業保険)やハローワークでの就業支援などを受けるための保険で、加入者は失業もしくは自己都合で退職した際には、失業手当(失業保険の基本手当)をもらうことができます。

失業手当をもらえるのは

失業手当は失業した方が再就職するための支援として支給されるものであり、退職した方すべてが一律にもらえるものではありません。失業手当をもらえるのは、ハローワークが定める「失業」の状態、つまり、「就職しようとする積極的な意思があり、いつでも就職できる能力があるにもかかわらず、職業に就くことができない」状態にあると認められる方のみ。したがって、退職後すぐに転職する方や、病気やけがですぐに働ける状態にない方は、原則として失業手当をもらうことはできません。

失業手当をもらえる条件

失業の状態にある方のすべてが、失業手当を受け取れるとも限りません。失業手当を受け取ることができるのは、失業前に雇用保険に加入しており、かつ、一定の要件を満たす方のみです。「一定の要件」は、退職した理由に応じて異なります。

一般の離職者の場合

一般の離職者とは、転職や独立など、いわゆる「自己都合」で退職する方のこと。離職の日以前2年間に、雇用保険の加入期間が通算して12カ月以上ある場合のみ、失業手当をもらうことができます。

特定理由離職者の場合

自己都合により退職した方で、自分の意思に反する正当な理由があると認められた場合は「特定理由離職者」に認定されます。特定理由離職者に認定された方は、離職の日以前1年間に、雇用保険の加入期間が通算して6か月以上ある場合のみ、失業手当をもらうことができます。

特定理由離職者には次のような方が当てはまります。

体力不足や心身の障害などにより離職した方
両親の看病や介護など家庭環境の急変で離職を余儀なくされた方
出産や育児を理由に離職し、失業手当受給期間延長の措置を受けた方
特定受給資格者の場合

勤務先の倒産や突然の解雇などの理由により、再就職の準備をする時間的な余裕がないまま離職を余儀なくされた方は「特定受給資格者」に認定されます。特定受給資格者は、離職の日以前1年間に雇用保険の加入期間が通算して6か月以上ある場合のみ、失業手当をもらうことができます。 

失業手当はいつからもらえる?

失業手当の受給資格がある場合、離職後にハローワークに出向いて所定の手続きをすると失業手当をもらうことができますが、すぐにもらえるわけではありません。
まず、受給資格決定日(ハローワークで離職票の提出と求職の申し込みをした日)から7日間は「待期期間 」とされ、離職理由にかかわらず、すべての方が失業手当を受給できないことになっています。

この待期期間後、「特定理由離職者」や「特定受給資格者」については失業手当の支給が始まりますが、実際に口座に振り込まれるのは、受給資格決定日から約1か月後であることに注意が必要です。また、一般離職者については、7日間の待期期間後、さらに2~3か月間の給付制限期間が設けられており、その間、失業手当は給付されません。失業手当は一定の条件を満たさないと受給できないこと、受給条件を満たしていても、申請後すぐにもらえるわけではないことを、頭に入れておきましょう。
なお、社会保険関連の情報は、下記の関連記事でも詳しく解説していますのでご確認ください。

気持ちよく
退職するために

退職が決まったら、自分自身の事務手続きと並行して、業務の引継ぎもしっかり行いましょう。自分の退職後も職場が混乱しないように、退職の日から逆算して引継ぎのスケジュールを立てて計画的に進めることが大切です。

引き継ぎのポイント

区切りの良いところまで終えておく

自分の担当案件は、すべて終えることはできないにしても、少なくとも区切りの良いところまでは終えておき、これまでの経緯と現状を分かりやすく後任者に伝えて引き継ぎましょう。

後任者を関係者に紹介しておく

退職する前にクライアントや外注業者など、関係者に後任の担当者を紹介しておきましょう。クライアントの担当者については、その性格や仕事の進め方の特徴などを共有しておくと、後任者がコミュニケーションを取りやすくなります。

引き継ぎノートを作る

口頭での引き継ぎには限界があります。時間はかかりますが、以下のような内容の引継ぎノートを作成すると、退職後も業務がスムーズに進みやすく、後任者に感謝されるに違いありません。

担当業務一覧
各業務のフロー、現状、課題
クライアントや担当者の連絡先窓口一覧
業務別のトラブル事例と対策法
各種資料の保管場所一覧

 職場の皆さんへの挨拶も忘れずに

退職前に有給休暇を消化する場合、有給休暇明けにそのまま退職日を迎えることも珍しくなく、職場の皆さんに最後の挨拶をする機会のないままフェードアウトする例も珍しくありません。うやむやなまま退社すると、元の職場の方に「あの人、挨拶もせずに、いつの間にかいなくなっちゃったな」という悪い印象を残すことになります。退職したからといって必ずしも元の職場の人と縁が切れるわけではありませんし、転職後に思いがけず一緒に仕事をすることも決してあり得ないことではありません。「退職のとき、きちんと引き継ぎして、挨拶もしてくれたな」という好印象を残しておけば、退職後も良い関係を築きやすいはず。退職する前には、必ずお世話になった方に一言挨拶して、気持ちよく送り出してもらいましょう。

また、退職後は元の職場の関係者からの電話に一切出ない、メールの返事もしないという方がいますが、これは社会人として完全にマナー違反。退職後も何かあったときに気軽に連絡・相談できるような関係を維持しておくと、後々何かの形で役に立つかもしれません。

まとめ

  1. 退職を決めたら、いきなり退職届を出すのではなく、まずは直属の上司に報告して、退職日をいつにするのか、すり合わせをする。 派遣契約の場合は、派遣会社の担当者と連絡報告を密にする。

  2. 退職の意思を伝えるタイミングは、勤務先の就業規則に従う。急な退職は、後任者の選定や引き継ぎに十分時間が取れず、周囲に迷惑をかけるので、退職を決めたらなるべく早く申し出るようにする。

  3. 退職日が決まったら、健康保険や厚生年金など社会保険関連の手続きを進める。手続きの内容は、退職後に転職先ですぐに働き始める場合とそうでない場合とで異なる。すぐに働かない場合の手続きには、期限付きのものもあるので、わからないことは人事担当者に確認しつつ、漏れのないよう着実に手続きを進めることが大切。

  4. 退職前の職場で雇用保険に加入していて、一定の要件を満たす方は失業手当を受給できる可能性がある。ただし、失業手当の受給対象者でも、申請してすぐに受給できるわけではないことに注意が必要。

  5. 退職後も元の職場の方々と完全に縁が切れるとは限らない。しっかり引き継ぎの義務を果たし、お世話になった方にきちんと挨拶をして、気持ちよく送り出してもらおう。

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