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通訳や翻訳ってどんな仕事?私もなれる?必要な英語力や資格とは

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13分

通訳や翻訳ってどんな仕事?私もなれる?必要な英語力や資格とは

相山 華子(あいやま はなこ)

相山 華子(あいやま はなこ)
1997年慶應義塾大学卒業後、山口放送株式会社(NNN系列)のテレビ報道部記者を経て、2002 年からライターとして活動。各種ウェブメディア、企業広報誌などで主にインタビュー記事を担当するほか、外資系企業の日本語コンテンツ監修も手掛ける。

英語力を活かせる仕事として人気のある通訳・翻訳。具体的にはどのような場面で、どのような役割を果たす仕事なのでしょうか?また、プロの通訳・翻訳者として活躍するには、どの程度の英語力が求められるのでしょうか?通訳・翻訳者として活躍するために習得しておきたいスキルや資格についても解説します。

CONTENTS

通訳の仕事

通訳とは、異なる言語を使う人同士が意思疎通できるよう、相手が話した内容を「聞き手が求める言語」に訳して伝えることです。外国語⇒日本語、日本語⇒外国語をそれぞれの通訳者で分担する場合と、外国語⇔日本語を1名の通訳者のみで行う場合があります。

通訳の手法

通訳の手法には、大きく分けて次の3つの種類があります。

同時通訳

通訳者1人で「聞く」と「訳す」をほぼ同時に行う通訳手法で、大規模なセミナーや国際会議、講演会などで行われます。かなりの集中力を要するため、長時間にわたる場合は複数人の通訳者が約15分ごとに交代しながら行います。通訳中、通訳者は防音設備のある専用ブースに入り、イヤフォンで発言者の声を聞き取り、マイク越しに通訳します。聞き手はマイクが拾った通訳者の音声をレシーバーを介して聞き取ります。最近はレシーバーではなく自身のスマートフォンやパソコンから通訳者の音声を聞けるシステムも登場しています。

逐次通訳

発言者の話を適宜区切って、訳していくもので、対談やインタビュー、ビジネスミーティングなど幅広いシーンで活用されています。「聞く」→「訳す」の間に一定のインターバルがあるので、同時通訳よりも丁寧に訳を伝えられるのが特徴。また複数人で分担して行うことが多い同時通訳に比べ、1人または少数の通訳者で対応できるので、コストが抑えられるというメリットもあります。ただし、発言者が話す→通訳→発言者が話す→通訳といった具合に、発言者と通訳が交互に話すため、時間がかかるというデメリットも。例えば会議時間が1時間確保されていても、うち30分程度は通訳に割かれるため、発言者が発言できる時間は正味30分程度に限られます。

ウィスパリング通訳

通訳を必要とする人のすぐそばで、ささやくように行う通訳のことです。同時通訳と同じく、「聞く」と「訳す」をほぼ同時に行うのでかなりの集中力が必要とされるため、長時間にわたる場合は複数人で交代して行います。対談や少人数での会議、通訳が必要な人が少ないシーンでよく用いられます。たとえば、日本語で行われる会議で出席者10人のうち日本人が9人で、日本語を理解できない外国人が1人しかいないときは、日本語⇒英語の通訳はウィスパリング通訳が適しています。

必要な英語力、キャリアの積み方

必要な英語力

その場で正確かつ迅速に訳することが求められる通訳には、高度な英語力が求められます。では、具体的にどのくらいの英語力があれば、プロの通訳になれるのでしょうか?実はプロの通訳になるにあたって特に必要な資格はなく、明確な基準は設けられていませんが、少なくとも日本語・英語ともにネイティブレベルのリスニング力・スピーキング力が必要です。一概には言えませんが、国際会議などに通訳者を派遣する派遣会社などでは、英語通訳者の応募条件を「TOEICテスト900点以上」としているケースが多いようです。
ただし、旅行者を対象に通訳案内業務をする場合は、国家資格の通訳案内士の取得が必要です。

キャリアの積み方

キャリアの始め方としては、いきなりフリーランス通訳者として活動する方法、インハウスの通訳者を採用している企業に未経験採用で就職し、実務経験を積む方法、通訳エージェントや派遣会社に所属・登録して、インハウス通訳の実務経験を積む方法などがあります。ただし実績がないとフリーランス通訳を名乗っても仕事の打診がなかなかもらえなかったり、企業の社員採用では「実務経験3年以上」など、実務経験を問われることが多いので、ますは派遣社員として実務経験実績をしっかり積んでから、希望する働き方の通訳者となるのも一案です。フリーランスとインハウス通訳者の違いについては、下記の関連記事で詳しく解説しています。 

求人の例

求人サイトを見てみるとわかりますが、同じ「通訳」の求人でも、その業務内容は様々で、求められるスキルのレベルも案件によって異なります。ここでは通訳の主な活躍シーンについて、いくつか例をみていきましょう。

会議通訳

国際会議やカンファレンス、組織のトップを交えた商談や大企業の経営会議など、外交やビジネス会議 の場で行う通訳のことで、通訳市場において最も需要が大きく、最も高い通訳技術が必要とされます。国際会議やカンファレンスなど大人数の人が参加する場では「同時通訳」が、少人数の商談や会議では「逐次通訳」か「ウィスパリング通訳」が採用されるのが一般的です。

展示会通訳

国際展示会や国際見本市などイベントの展示ブースで、来訪される外国人のお客様に対応します。また、展示会視察に同行して各ブースを回りながら通訳することもあります。

スポット通訳

オンライン会議、ワークショップ、プレゼンテーションなど単発で発生する小規模なスポット案件に、通訳者として参加し、異言語間のコミュニケーションを円滑に進められるようにサポートします。

インハウス通訳

企業の社内に社員または派遣社員として常駐し、通訳業務を行います。社員同士の打合せや、社外向けのプレゼンテーション、定例会議など常時社内で発生する通訳業務に従事します。通訳形式は、会議の人数や相手などによって、逐次通訳から同時通訳まで、さまざまな形式で対応するため、幅広く通訳実務経験を積むことができます。空き時間に担当する会議資料の翻訳業務を担当することもあります。 

司法通訳

事件に関係する外国人の捜査や取り調べ、裁判での通訳を担当します。裁判で裁判官や検察官、弁護人や被告人、証人の通訳をする人は法廷通訳人と呼ばれ、原告・被告のどちらにも偏らない、公平中立な立場で訳すことが求められます。裁判の通訳では極めて高い正確性が求められるため、基本的には、逐次通訳の手法で行われます。

医療通訳

医療機関などで外国人患者の診察や治療に立ち会い、外国人患者と医療従事者間のやり取りを通訳します。治療の成否を左右する可能性もあるため、正確な通訳はもちろん、基本的な医学の知識も求められます。

翻訳の仕事

翻訳とは外国語で書かれた文書を日本語に訳す、もしくは日本語で書かれた文書を外国語に訳す仕事です。同じく外国語⇔日本語を訳す仕事として知られる「通訳」が音声でアウトプットするのに対し、翻訳は文字でアウトプットします。翻訳の仕事には、大きく分けて次の3つのジャンルがあり、それぞれ次のような特徴があります。

翻訳の仕事のジャンル

実務(ビジネス)翻訳

契約書やマニュアルなどビジネスで使うあらゆる文書、ビジネス書・学術書などの翻訳をする仕事です。ITや医療、金融など業界特有の専門用語の多い文書を扱うため、語学力だけでなく、その業界についての基礎的な知識や商習慣、トレンドなどについての理解も求められます。そのため、実務(ビジネス)翻訳者には特定の分野の翻訳を専門とする人が珍しくありません。

文芸翻訳

外国語の書籍や雑誌、歌詞などさまざまな作品を日本語に訳す、もしくは日本の作品を外国語に訳す仕事です。単純に直訳するだけでなく、それぞれの作品の世界観や雰囲気などを表現することが重視されるため、外国語の読解能力だけでなく、日本語の表現力や語彙の豊かさ、作品の舞台となっている国の文化や歴史、作家の個性を深く理解する力が求められます。時には作者と直接やり取りして、文意を確認することもあります。

映像翻訳

外国の映画やドラマ、ドキュメンタリーや動画といった映像作品の音声を日本語に、もしくは日本語の映像作品を外国語に訳し、吹き替えのセリフや字幕を作成する仕事です。吹き替えはわかりやすく自然なセリフに訳す力が、字幕の場合は、文字数制限のある中、パッと見ただけで理解できるわかりやすい文章で表現する力が求められます。また、外国語の読解力だけでなく、作品で描かれる時代にふさわしい表現や言い回し、舞台となっている国や地域の文化や歴史、若者が使うスラングなど、幅広い知識が求められる仕事でもあります。

翻訳家に必要な英語力、キャリアの積み方

必要な英語力

グローバル化が進む中、翻訳の対象となる言語もますます多様化していますが、やはり最も需要が多いのは英語⇔日本語の翻訳です。では、どの程度の英語力があれば、プロの翻訳者として仕事をすることができるのでしょうか?

通訳者と同様に、プロの翻訳者になるために必要な英語力には明確な基準はなく、特に資格も必要ありません。とはいえ、誰にでもできるわけではなく、英語力が高ければ高いほど、より有利な条件で働ける可能性は高くなります。なお、翻訳者には主に企業や翻訳会社に所属して翻訳専門の正社員・もしくは契約社員もしくは派遣社員と して働くスタイルと、フリーランスとして個人で仕事を請け負いながら働くスタイルがあります。

前者の場合は採用にあたってTOEICテストのスコアの提示を求められることが多く、一般的には800~900点以上あると高く評価されるようです。またフリーランスの場合は、新規の取引先から仕事を受注する際には、過去の実績(翻訳を手掛けた書籍や記事など)の提示を求められることが多いので、あらかじめポートフォリオとしてまとめておくと良いでしょう。

キャリアの積み方

個人差があるので一概には言えませんが、各ジャンルとも次のように会社員・契約社員・派遣社員としてキャリアをスタートさせ、実力をつけてからフリーランスとして独立する例が多いようです。インハウスとフリーランスについて詳しく知りたい方は下記の関連記事をご覧ください。

実務(ビジネス)翻訳の場合

キャリアの始め方としては翻訳の専門職を採用している企業に入社する、もしくは翻訳会社に所属して仕事を得る、あるいは派遣会社に登録して翻訳者を募集している企業に派遣される方法が一般的です。

文芸翻訳の場合

一般的には、翻訳会社や海外文芸書を扱う出版社などに就職してキャリアを積みます。ずっと会社員として働き続ける方もいますが、独立してフリーランスとして活躍する道を選ぶ方も多いようです。最初からフリーランスで挑戦する場合は、出版社に自身が翻訳した原稿を持ち込んで受注を取り付けるケースや出版社主催の翻訳コンテストに応募、入賞を機に発注が来るようになるケースなどがあります。

映像翻訳の場合

映像制作会社にアルバイトや社員として就職し、キャリアをスタートするケースが多いようです。特殊な技能が求められるため、初めからフリーランスで仕事を始めるのは難しいでしょう。

求人の例

実務(ビジネス)翻訳、文芸翻訳、映像翻訳のうち、最も求人数が多いのは実務(ビジネス)翻訳です。求人サイトなどを見てみると、多くの企業が翻訳専任の正社員や派遣社員を募集していますが、一口に翻訳と言っても、企業内で行う翻訳の仕事の内容や難易度は様々です。以下のうち、どの翻訳業務を担当することになるのか、よく確認してから応募するようにしましょう。

翻訳

外国語を日本語に、あるいは日本語を外国語に訳す業務全般を担当します。

翻訳チェック

翻訳者が訳した訳文を原文と突き合わせ、翻訳ミスや誤字脱字がないかをチェックします。

ローカライズ

翻訳者の訳文をチェックし、外国語特有の言い回しを、より日本語らしい言い回しに修正します。

ライティング

勤務先の企業が必要とする外国語の文書を作成します。

プルーフリーディング

翻訳チェックや校正が済んだ訳文を確認し、翻訳ミスや誤字脱字はもちろん、表現や言い回しが適切かどうかも含めて最終的なチェックをします。

ポストエディット

AIによる機械翻訳の訳文を確認し、違和感のある部分や間違いを修正・リライトして訳文を完成させます。

通訳・翻訳に
必要な英語力は?
英語力以外に
必要なスキルも

このように常に高い英語力が求められる通訳・翻訳ですが、先述の通り、原則として特に資格は必要ありません。では、採用に際して、企業側は応募者の英語力を見極めるために、何に注目しているのでしょうか?

TOEICテストのスコアや資格

応募者の英語力を知るために最もわかりやすいのはTOEICテストのスコアや英語関連の資格の有無です。特にビジネスの場面で重視されるのはTOEICテストで、通訳・翻訳で活躍するためには最低でも900点が必要だとされています。採用に際しては2年以内のスコアが求められることが多いので、こまめに受験して最新のスコアが提示できるようにしておきましょう。その他の資格では、英検なら1級、国連英検ならA級・特A級など各資格試験の最高級レベルの合格実績が必要です。

大学や専門学校での学習・訓練実績

通訳・翻訳の現場では常に高い正確性・専門性が求められるため、採用にあたっては独学ではなく、大学や専門学校で英語の専門教育を受けているかどうか、通訳・翻訳の専門学校などで実践的な訓練を受けているかが重視されます。したがって、大学、短大、専門学校に進学してネイティブに近いレベルの英語力をしっかり習得した上で、さらに通訳・翻訳養成の専門学校などへ通って訓練を受けることで、採用される可能性が高くなります。

日本語力も大切

英語力ばかりが注目されがちですが、通訳・翻訳には英語力だけでなく正確な日本語力も必要です。訳した英語をよりわかりやすい日本語で表現する力、日本語を正確に理解した上で英語に訳す力が大切であるためだからです。関係する業界の専門用語やトレンドワードを常にチェックし、正確でわかりやすく、違和感のない自然な訳ができるよう日本語のブラッシュアップも心がけましょう。

情報収集力、調査力なども大きな武器に

通訳・翻訳が求められる業界や分野は幅広く、医療やITなど専門性の高い内容を訳すことも珍しくありません。事前に共有される資料に目を通すのはもちろんのこと、業界の動向やトレンド、業界を取り巻く社会情勢などにアンテナを張って情報収集に努めましょう。特に通訳の現場では、予備知識の引き出しが多ければ多いほど、臨機応変な対応ができるようになるはずです。

まとめ

  1. 一口に通訳・翻訳と言っても、その活躍の場面はさまざまで、担当する業務や求められるスキルの高さも異なる。求人に応募する際は、具体的にどのような業務を担当することになるのか、しっかり確認する。

  2. 通訳・翻訳ともに、採用にあたっては実務経験が重視されるため、いきなりフリーランスとして独立して生計を立てていくのは難しく、まずは企業で正社員や派遣社員として実務経験を積んでから独立するケースが一般的。

  3. 通訳・翻訳業務には当然ながら高い英語力が求められ、TOEICテストなら800点から900点程度は必要。また、独学ではなく、大学や専門学校等での専門的な学習・訓練の実績の有無が重視される。

  4. 通訳・翻訳には英語力だけでなく日本語を正しく理解・表現する力も求められる。時事用語や流行語などにもアンテナを張り、常に自然でわかりやすい訳を心がけよう。

  5. 情報収集力や調査力も通訳・翻訳に求められるスキル。担当する企業に関連する業界の専門用語をチェックするのはもちろん、トレンドもチェックしておこう。

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