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通訳者のためのオンライン通訳ガイド

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通訳者のためのオンライン通訳ガイド

相山華子

相山華子
1997年慶應義塾大学卒業後、山口放送株式会社(NNN系列)のテレビ報道部記者を経て、2002 年からライターとして活動。各種ウェブメディア、企業広報誌などで主にインタビュー記事を担当するほか、外資系企業の日本語コンテンツ監修も手掛ける。

コロナ禍を機に日本でもリモートワークの導入が進みましたが、新型コロナウイルス感染症の位置づけが第5類に移行した今も、社員の働き方改革の一環として多くの企業がリモートワークを継続しています。これに伴い、引き続き、通訳者にもオンラインでの会議やイベントの通訳を求められるケースが増えています。関西大学大学院 外国語教育学研究科の高橋絹子教授は、その背景には、コロナ禍以降、オンライン通訳の存在と、時間単位で手軽に利用できる、あるいは現地に来てもらうような煩雑さがないといった、オンライン通訳の利便性が周知されたことで、通訳利用が増加していることも考えられると指摘しています。*1
一方で、経験がないから、あるいはITが苦手だからと、オンライン通訳を避けてしまう方も多いのではないでしょうか。
オンライン通訳を身近に感じていただくために、対面での通訳とオンライン通訳の違いについて説明するとともに、リモートワークでオンライン通訳をする際に準備すべきものを紹介します。

CONTENTS

対面での通訳と、オンライン通訳の仕事の違い

リモートワークの定着などにより、通訳者には従来の対面での通訳に加えオンライン通訳が求められることも増えています。改めて対面での通訳とオンライン通訳の仕事の違いを確認しておきましょう。

限られる情報量

対面の場合は、通訳が会議やイベントなどに立ち会うため、話者の話す言葉を聞くだけでなく、話者のジェスチャーや表情などの非言語コミュニケションにより、話者の思いや感情をリアルに理解しながら通訳をすることが可能です。
オンラインの場合はモニターを通じての通訳となるため、ジェスチャーや表情など、話者の話す内容の手掛かりとなるリアルな情報が届きにくく、通訳の精度に影響を与える可能性があります。

リスク

対面の場合は、交通の遅延や天候の影響を受けるリスクがあります。
オンラインの場合は通信環境によるトラブルや、通信機器やデバイスの不具合が起こるリスクがあります。

時間とコスト

対面の場合は、話者、通訳者ともに、移動に時間とコストがかかります。それぞれが移動することが前提となるため、スケジュールの調整が複雑になります。
オンラインの場合は移動の時間とコストはかからず、スケジュールの調整も対面に比べて容易です。

クライアントとのコミュニケーションの質

対面の場合はクライアントとの物理的距離が近いので、ミスコミュニケーションが起こりにくく、仮に起こってもリカバリーがしやすくなります。
オンラインの場合は、クライアントとの距離があるため、ミスコミュニケーションが起こりやすく、リカバリーをすることも難しくなることがあります。

オンライン会議はもともと、新型コロナウイルス感染の拡大期に感染予防の一環として広く普及した経緯がありますが、コロナが第5類に移行した後も、リモートワーク定着を背景に利用が拡大しました。その後も移動時間やコストの削減、オンライン環境があればどこからでも参加・視聴できるなど利便性が評価され活用が続き、今後ますますニーズは高くなっていくものと考えられます。
また、リモートワークに限らず、対面で通訳をする場合も、一部の話者がオンラインで参加するという形も一般的になっています。これまで対面での業務がメインだった通訳者にとっても、オンライン通訳への対応はプロフェッショナルとして通訳を続ける上での、必須要件の一つとなりつつあります。
オンライン通訳に対応できるよう、しっかり準備しておくことは仕事の幅を広げることにもつながります。

オンライン通訳にはどんな準備が必要?

ここではリモートワークでオンライン通訳をする場合に必要な準備について説明します。

インターネット環境を整える

リモートワークでオンライン通訳の仕事をする場合に、不可欠なのがオンライン環境の整備です。通信回線が安定している、通信速度が速いなど、インターネットの接続環境が整っていることが重要です。
接続環境が整っていないと、オンライン通訳の映像や音声が途切れてしまい、会議進行の妨げとなり、参加者の満足度が低くなってしまいます。自宅で業務に当たる際には事前に必ずインターネット回線が安定しているかを確認し、動作を確認しておきましょう。
インターネット回線の速度が遅いと感じたときは、例えばGoogleで「スピードテスト」と検索すると、速度テスト画面が表示されインターネットのダウンロード速度と、アップロード速度がテストできます。ダウンロード速度は、利用しているネットワークが一定の期間にインターネットサーバーからデータを受信する速度ですが、50Mbps以上であればオンラインの会議に十分対応が可能です。アップロード速度は、利用しているネットワークがインターネットサーバーにデータを送信する速度を示しますが、1Mbps以上であればオンラインの会議に対応可能です。

回線の速度が遅い場合は、デバイスの再起動、インターネットの再接続を試みてみましょう。無線ルーターの設置場所を変更することで回線速度が速くなる可能性もあります。
また、無線LAN接続は電波の障害を受けやすいため、安定した通信環境のためには有線LAN接続で行うと安心です。

専用の静かな空間を確保しよう

インターネット環境の次に大切なのが、静かな空間の確保です。会議に関係のない雑音は会議参加者の集中力を妨げてしまいます。特に自宅でオンライン会議に参加する場合は家族の話す声やテレビの音、屋外の騒音によって通訳者である自分の音声を妨げてしまわないよう注意してください。小さなお子さんやペットがいるご家庭の場合は会議中に入室してこないよう対策を講じておきましょう。また、カフェやファミリーレストランなど不特定多数の人がいる空間でのオンライン会議への参加は、コンプライアンスの面でルール違反とされる可能性が高いため、避けましょう。

マイクやカメラのチェックも忘れずに

オンライン会議では、パソコンなどのオンライン端末に内蔵されているマイク・カメラ機能を使用します。万が一、マイクやカメラに支障があって音声や画像が途切れてしまうと、通訳した内容が相手に伝わらず、会議やイベントの進行を妨げてしまいます。必ず事前に、マイクやカメラの動作を確認してください。また、オンライン通訳を行う場合は話者の方に可能な限り、カメラを「オン」にしてもらいましょう。これは話者の表情の変化や会場の雰囲気といった非言語情報を読みとって、より正確で実情に即した通訳を行うためです。
なお、パソコンなどに内蔵されているマイクの音声が不明瞭で、カメラの画像が不鮮明な場合は、より正確に音声や画像がやり取りできる外付けのマイクやカメラの利用も検討しましょう。

どのオンライン会議プラットフォームを指定されても、慌てないように事前準備をする

オンライン会議やイベントに使うプラットフォームは、主催者によって異なります。原則として通訳者が選ぶことはできないため、どのプラットフォームを指定されても対応できるよう準備が必要です。主催者が指定するプラットフォームにあらかじめアカウントを作っておきましょう。また、各プラットフォームはそれぞれ使い方が異なるため、当日アクセスできない・使い方がわからないといった状況にならないよう、必ず前日までにアプリをダウンロードし基本動作を確認した上で臨みましょう。

主なオンライン会議システムは以下の通りです。

*Zoom
https://www.zoom.com/ja/products/virtual-meetings 
*Microsoft teams
https://www.microsoft.com/ja-jp/microsoft-teams/group-chat-software  
*Webex
https://www.webex.com/ja/index.html

オンライン通訳のスキルを磨く

オンライン通訳には、対面での通訳と違い、話者と「場」を共有できないというデメリットがあります。対面の場合、会議開始前にあいさつや雑談をして話者と打ち解けることもできますが、オンラインではそうした時間をとることは容易ではありません。また、カメラに話者の顔だけが映し出され、会場の雰囲気がわからないことも多いため、対面での通訳に比べて収集できる情報量が大きく制限されます。こういった状況でより高品質な通訳サービスを提供するためには、以下のようなトレーニングをしてオンライン通訳に特化したスキルを磨く必要があります。

リスニング力のさらなるブラッシュアップを

収集できる情報が制限されるオンライン環境では、話者の話から得る情報がより重要になります。声のトーンや言葉選びの裏に、話者のどのような気持ちや意図が込められているのかを把握できるよう、トレーニングをすることが大切です。オススメは、通訳トレーニングの基本であるシャドーイングトレーニングを増やすことです。リスニング力の向上のために有効とされるシャドーイングは、発音やリズムを真似ることで、リスニングとスピーキングの両方を向上させることができます。無料から有料のものまで、多くのスマホアプリもあるので、自分の目的にあったものを探してみましょう。また、シャドーイングに加えて、興味のあるテーマのポッドキャストや映画やドラマ、BBCやCNNなどのニュースを集中的に視聴するなどのトレーニングを行うことで、リスニング力のさらなるブラッシュアップを図りましょう。

声を聞き分ける力を磨こう

オンライン会議やイベントのパネルディスカッションでは話者が複数いるため、誰が発言したのかがわかりにくいことがあります。話者側のインターネット接続環境やPC容量の関係でカメラオンをお願いできない場合には、できるだけ早く自分が通訳を担当する話者の声や話し方を覚えて、スムーズに通訳できるように心掛けることが大切です。

話者の呼吸のタイミングを読む

オンライン会議では、話を始めるタイミングが他の人とかぶってしまうことがあります。声のかぶりは話者の話を遮ってしまったり、聴衆に内容が伝わりにくくなる原因となるため、特に逐次通訳の場合は注意が必要です。同時通訳の場合はそもそも音声がかぶることが前提ですので、通訳専用の回線が用意されています。しかし、同時通訳の場合でも、息継ぎのタイミングや訳出が変なところで途切れると、聴衆に内容が伝わりづらくなります。一般的には、話者は話す内容が一段落したとき、アイデアやポイントを紹介し終わったとき、話が新たなトピックに移るとき、聴衆や他の話者に質問や確認の言葉を発するときなどに話を区切ります。話者が話に区切りをつけるタイミングを逃さず、通訳を入れましょう。

キャリアアップだけじゃない、オンライン通訳は、通訳者にもメリットがたくさん!

対面での通訳とは違ったところも多いオンライン通訳ですが、あらためて通訳者にとってのメリットを紹介しておきます。

通訳者にとってのオンライン通訳のメリット

  • 会議やイベント会場まで移動する必要がなく、時間や体力を消耗せずに済む

  • 対面と比べて時間の制約が少ないので、1日に受けられる仕事の数を増やすことができる

  • 「オンライン対応可能」とうたうことで、アサインされる仕事の量・幅が増える

  • 出張が不要になるため、子育てや介護中でも仕事を受けやすい

オンライン会議やイベントの普及が進み、オンライン通訳の需要はますます大きくなりつつあります。オンライン通訳の特長を理解し、リモートワークの環境でもオンライン通訳に対応できる設備や機器を整えれば、通訳者としてキャリアの幅を広げることが可能です。ぜひチャレンジしてみてください。

*1 外国語学部紀要 第 29 号(2023 年 10 月)
04_研究展望_高橋絹子氏.indd (kansai-u.ac.jp)

まとめ

  1. 対面での通訳とオンライン通訳の違いを理解し、オンライン通訳に対応するために必要なことを確認しよう。

  2. オンライン通訳に対応するために、環境とツールを整え、よく使われるプラットフォームは扱えるようにしておこう。

  3. 通訳技術で必要なことは「リスニング力」の強化。シャドーイングトレーニングや話者の呼吸タイミングを掴むトレーニングでリスニング力に磨きをかけよう。

  4. オンライン通訳に対応できれば、キャリアアップも可能。利便性のメリットもあるので、是非チャレンジしてみよう。

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