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通訳、翻訳という職業の将来性は?自動通訳や自動翻訳に切り替わるのか

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6分

通訳、翻訳という職業の将来性は?自動通訳や自動翻訳に切り替わるのか

相山 華子(あいやま はなこ)

相山 華子(あいやま はなこ)
1997年慶應義塾大学卒業後、山口放送株式会社(NNN系列)のテレビ報道部記者を経て、2002 年からライターとして活動。各種ウェブメディア、企業広報誌などで主にインタビュー記事を担当するほか、外資系企業の日本語コンテンツ監修も手掛ける。

AIの進化に伴い、自動通訳・翻訳技術の進化には目を見張るものがあります。国際会議では、外国語話者の発言内容が即時に翻訳され、背後のスクリーンに映し出される自動翻訳機能の導入も始まっています。また、ビジネスの場面でも契約書や技術文書などの翻訳において自動翻訳のサポートを受けることが一般的になりつつあります。
このような流れから、「通訳・翻訳の仕事がAIに奪われるのではないか」と懸念する声も聞かれます。しかし、実際のところはどうなのでしょうか。本記事では、AIに仕事を奪われないために通訳者・翻訳者が磨くべきスキルについても紹介します。

CONTENTS

通訳・翻訳の現状と重要性

国の発展を支えてきた通訳・翻訳の活用領域は今も拡大中


外国語を日本語に、日本語を外国語に訳す通訳・翻訳は、日本の国際化や近代化に大きな役割を果たしてきました。ビジネスシーンでの通訳・翻訳者の活躍は目覚ましく、日本が経済大国として成長を遂げる過程で、多くの優秀な通訳者・翻訳者が大きな役割を果たしたことは言うまでもありません。ビジネスだけでなく、学術・芸術分野、スポーツや文化の分野においても、通訳者・翻訳者の存在が無ければ、現在のような発展はありえなかったと言っても過言ではないでしょう。さらに最近では、インバウンド旅行客の爆発的な増加を受けて、旅行・観光業界でも通訳者・翻訳者の活躍の場が増えています。



自動通訳・翻訳の機能


そうした中で、AI(人工知能)の飛躍的進歩により開発が進む自動通訳・翻訳機能が注目を集めています。

自動通訳とは、AI(人工知能)を使って音声を別の言語の音声やテキストに自動翻訳する技術やサービスのこと。リアルタイム音声翻訳とも呼ばれ、スマートフォンやPCWeb上のアプリやプラットフォームなどで利用できます。

一方の自動翻訳も同じくアプリやプラットフォームで利用できるサービスですが、音声ではなく文章が対象で、アプリやプラットフォームに訳したい文章を入力すると、AIがほぼ瞬時に別の言語に翻訳してテキストで表示してくれます。
いずれも、人による通訳、翻訳に比べて、時間とコストを大幅に削減できることから、開発への期待が高まっています。


自動通訳の将来性

AIにより自動通訳技術は進歩!ただしシチュエーションや通訳形式により難易度に差も


自動通訳はAIの登場によって格段に進歩しています。手順としては、まず発話された言葉を音声認識技術によりテキストに変換し、それを機械翻訳します。そして翻訳されたテキストが音声合成技術により音声に変換されて提供されるという流れで行われます。3つの技術と段階が必要なわけです。

一口に"通訳"といっても、会話の内容や通訳形式によって必要とされる技術の難易度に差があります。


例えば会話の内容が個人間の日常会話である場合、独特の表現や訛りを音声認識できなければなりませんが、翻訳段階での必要な単語数はさほど多くありません。同じ11の対話でも、ビジネスシーンの商談になると必要な単語数は格段に上がるでしょう。例えば、繊細さが要求される交渉シーンなどでは言外の情報も考慮した翻訳レベルが求められます。一方、特定施設での受付対応など定型化された会話であれば、単語数だけでなく使われる文章パターンも少ないため、いくつかの定型文を訳せるだけで対応できるかもしれません。

日常会話では広く普及、国際イベントでも導入が進んでいる


実際に11の日常会話や定型化された会話では、自動通訳が広く使われ始めており、逐次形式で短い発話のやり取りであれば、かなり高い精度で通訳された音声が提供できるようになっています。有名な国際イベントでも導入する動きが出てきていますが、完全な自動通訳ではなく、今はまだ音声の翻訳文を文字で表示するものがメインで、主催者などが自動通訳でよいと判断された内容のものに限られているようです。

国際学会などのアカデミックな場では1対複数のコミュニケーション形式である、講演での自動通訳導入も始まっていますが、やはり音声での提供ではなく、音声の翻訳文をスクリーンに表示する、という形式です。

そして、複数対複数のシチュエーションや、繊細さが要求される交渉、専門的な会話ではまだ課題が多く残っており、導入が進んでいません。リアルタイムでの同時通訳についても、十分な水準で提供できる状態にはなっていないようです。

ビジネスシーンでも使える技術が整いつつあるが、本格導入には慎重派が多数


インハウス通訳者が多く活躍するビジネスシーンでも、互いの言葉を話せない人同士が自国語のままで対話できるリアルタイムのAI自動通訳サービスが、一部で導入され始めています。多数の言語をほぼタイムラグなく訳して、音声・テキストにすることができるなど、技術レベルはかなり高くなってきていると言ってよいでしょう。こうした自動通訳サービスの多くは、クラウド上の最新最適なエンジンとAIを使った翻訳精度の高さが特長で、長い文章も訳すことができます。
エンジンがクラウド上にあるので「ポケトーク」のような専用端末がなくても、インターネット環境さえあればスマートフォンやパソコンにインストールしたアプリやプラットフォーム上で利用できるのが特徴です。国を超えたコミュニケーションを必要とするグローバル企業にとっては非常に便利なツールですが、実態としてはまだ、社内の少人数会議に試験的に使う、といった限定的活用にとどまっているケースが多いようです。そしてビジネスの交渉や役員会議、ディスカッションを伴う講演、外交の場や国際会議などではまだまだ慎重な意見が大半です。

人間の通訳者は要らなくなる?


このように便利な自動通訳サービスの登場を受けて、AIが人間の通訳から仕事を奪うのではないか、あるいは人間の通訳はもういらなくなるのではないかという声も聞かれます。しかし、結論からいうと、今の段階でAIが人間の通訳者にとって代わることは難しいと考えられています。

その理由としては、以下のような点が挙げられます。

(1)    話者の音声が明瞭とは限らない


自動通訳では最初に、相手が発した音声を聞き取ってテキストに変換する必要があります。しかし、話者が話す音声が必ずしもアナウンサーの音声のように明瞭でわかりやすいとは限りません。人間同士ですら、時には相手の声が聞きとりづらく、何を言っているのかわからないということがよくあります。そういった不明瞭な言葉は自動通訳でも音声認識がうまくいかず、適切な通訳ができません特に日本語には、例えば「はし(橋・箸・端)」のように、同じ音でも意味が異なる「同音異義語」が多く存在します。前後の文脈から、その単語の意味を推察した上で正しく翻訳するスキルは、現段階では人間の方が自動通訳よりも優れています。さらに機械では句読点やカンマ、ピリオドの認識もうまくいかないケースが多く、訳が不自然になることがあります。

(2)    表情や声色にも「情報」がたくさん


人間同士の会話では言葉(音声)以外にも、声のトーンや表情、身振り手振りなど複数の情報が交換されています。例えば、同じ「もう、いいよ」という言葉も、優しい声で言うと「大丈夫、気にしないで」と受け取られますが、怒った声だと「もうやめてほしい」という拒絶の表現だと理解されます。「うん」という相槌も、明るい表情のときと暗い表情のときとでは、伝わるニュアンスは大きく異なります。こういった声のトーンや表情など非言語の情報を読み取ることができるのは、今のところ、人間のみです。機械通訳だけに頼っていると、発言者の意図とまったく違うニュアンスが伝わってしまうおそれがあります。

(3)    正しい通訳には「文化」や「社会情勢」への理解が必要


「言葉は生き物」と言われるとおり、言語はそれぞれの国の文化や歴史の中で育まれてきたもので、今もなお時代とともに変化を続けています。したがって、同じ意味の単語でも国や地域によって全く違う意味で使われることがあります。例えば英語で「Brick and Mortar」は直訳すると、「煉瓦とモルタル」という意味になりますが、ECショッピングの普及に伴い「Brick and Mortar」はオンライン店舗と対比した場合の「実店舗」を意味するようになっていて、ビジネスシーンではそのように訳されます。また、よく知られている例ですが、「Public School」はアメリカでは「公立学校」ですが、イギリスでは「私立学校」なので、前後の文脈を理解した上で訳さないと誤解が生じます。こういった地域ごとの意味合いの違いや、社会情勢の変化を鑑みた通訳は、自動通訳ではまだ完璧に行うことは難しく、人間の通訳に軍配が上がります。

自動通訳と人間の通訳者は共存の方向へ 


以上のような理由から、AIによる自動通訳が完全に人間の通訳者にとって代わることは、今の状況では難しいと言われています。ただ、
AIによる自動通訳が使用できる場面、AIによる自動通訳が補助的に使用できる場面は増えていくものと考えられます。

技術的な詳細や専門用語が多い会議では、自動通訳が補助的に使用され、リアルタイムでの文字起こしや簡単なフレーズの翻訳を提供するなどの支援を行いますが、主な通訳は人間の通訳者が担当するといったことが想定されています。つまり、自動通訳と人間の通訳者のどちらか一方だけが残るのではなく、両者が共存し、必要に応じて使い分けられる時代がやってくるのではないか、という見方が一般的です。

自動翻訳の将来性

自動翻訳は急速に利用拡大中、日常でもビジネスでも"使える"ツールに


一方、音声ではなく文章(書き言葉)を他言語の書き言葉に訳す「翻訳」については、通訳よりもさらに自動化技術が進んでいます。自動通訳サービスの多くが専用のアプリやプラットフォームを必要とするのに対して、翻訳については、Google翻訳のように、特別なアプリなどを必要としない無料のクラウドサービスも登場しています。例えば、GoogleのメールサービスGmailでは、日本語ユーザーの元に英文メールが届くと、自動的にAIが日本語に翻訳してくれます。また、AIチャットサービスの「ChatGPT」を使うと、入力した言語を瞬時に翻訳してくれるだけでなく、翻訳後の文章について「もっとカジュアルな文体に」、あるいは「もっと端的な文章に」などのリクエストにも柔軟に、そして瞬時に応えてくれます。しかも、AIの機械学習効果で、自動翻訳の精度は日進月歩の勢いで向上しています。自動翻訳を提供する企業の調査によるとビジネス文書の翻訳でも自動翻訳機能を使う企業が増えています。

また、翻訳の中でも難易度が高いといわれる動画の音声を翻訳するという可能性も考えられます。大作といわれる映画の翻訳は現段階では困難でも、Youtubeなど動画コンテンツの増加を背景に翻訳が求められる機会が増えることが予想されます。

人間の翻訳者は要らなくなる?


このような状況を受け、「人間の翻訳者は不要になるのではないか」という声も聞かれます。確かに無料で瞬時に精度の高い翻訳ができるのなら、料金を支払って翻訳者に依頼する必要性はなくなるのかもしれません。

欧州では企業や公的機関でAI翻訳が広く普及しています。また、IT製品の比較サイトのレポートでは、AIを使った自動翻訳は高い精度で外国語の文書を翻訳できるようになったと指摘しています。一方で、高精度な翻訳サービスを提供するグローバル企業の開発者は「特定の文脈や専門用語では翻訳者のサポートが必要です」とWebサイト上でコメントしています。結論から言うと、自動通訳が人間の通訳者に取って代われないのと同様に、自動翻訳が人間の翻訳者に完全にとって代わることは、現在のところ、困難だと考えられています。その理由としては、主に以下のような点が挙げられます。

(1)    精度が100%ではない


自動翻訳の精度が飛躍的に向上しているのは確かですが、まだ100%ではありません。ひとつひとつの言葉や文は正しく訳せていても、まとまった文章にしてみると意味が通じず、文章の流れが不自然に感じるケースがあります。

(2)    書き手の「気持ち」が伝わりにくい


自動翻訳による翻訳文は、ごく標準的な文章になることが多いようです。書き手が一生懸命に思いを込めて書いた文章も、いざ翻訳されると一般的で平坦な文章になってしまうことも珍しくありません。特に広告の分野ではこの傾向が顕著で、商品への愛情が思いあふれる紹介文や開発秘話が無味乾燥な文章になってしまい、ウィットに富んだキャッチコピーが単純な単語の羅列になることも珍しくありません。書き手の立場を考えた上で、その思いや熱意が伝わる表現で翻訳するには、やはり人間による翻訳が欠かせないのです。


(3)    自動翻訳には専門領域がない


翻訳者の中には、ファッションやエンターテイメント、小売業やマーケティングなど、それぞれの専門分野・得意分野で活躍する方が多くいらっしゃいます。得意とする領域で翻訳案件を多数こなしているうちに、その領域でよく使われる専門用語や表現、著名な人物や歴史などへの知見が蓄積され、それが翻訳の精度向上につながるのです。一方で自動翻訳では、まだ特定の領域に特化したサービスは少なく、その領域についての深い知見に基づいた翻訳は期待できません。

人間の翻訳者が必要な理由は


以上のような理由から、今のところ、人間の翻訳者の仕事が完全に自動翻訳に奪われてしまうとは考えられません。ただし、自動通訳の場合と同じように、予算と目的のバランスが考慮され、自動翻訳が選ばれるケースはこれからも増えていくでしょう。しかし、自動翻訳が選ばれた場合も、その精度が100%ではないがゆえに、人間の翻訳者の役割がなくなるわけではありません。自動翻訳に誤訳がないか、文章に違和感がないか、歴史的・文化的背景を無視した文章になっていないかなどを確認するためには、人間の「目」が必要だからです。これから翻訳者を目指すなら自らが進んで自動翻訳を使ってみて、その弱点や問題点を体感してみましょう。自動翻訳はあいまいな表現や、一つの単語が複数の意味を持つ多義語の翻訳で問題が生じるケースがあります。比喩や例え、慣用表現など文化的な背景から生まれる表現も適切な翻訳ができないときがあります。そのほか、医療や法律関係の専門用語の翻訳では、誤訳が起こりやすいという傾向があります。こうした自動翻訳の弱点や問題点を補うことができるスキルを磨いておくことをおすすめします。

今後、通訳者・翻訳者が強みにしていけるスキルとは

自動通訳や自動翻訳が完全に人にとって代わることは、今すぐには考えられないものの、通訳者・翻訳者としては今後に備えることは必要です。次のような点に留意して、常にスキルアップを怠らないようにしましょう。

(1)    専門知識を深める


先ほども触れたように、現状の機械翻訳には特定の領域に特化した専門領域がありません。そのため、専門知識を深めることで、AIでは対応が困難な専門用語に精通し、文脈をとらえ、言葉の背景にあるものが理解できるようにしましょう。

(2)    「文化」や「社会情勢」への理解を深める


文化的なニュアンスや背景、また刻々と変わる社会情勢への理解を深めることで、AIが対処可能な単なる通訳や翻訳ではない、意味や意図を正確に伝えられる通訳者・翻訳者を目指しましょう。

(3)    コミュニケーション能力を磨く


対クライアントや、仕事で関わる方との円滑なコミュニケーションも人だからこそ対応できる能力です。機械は指示を出す人の感情や事情、言外に含まれる要求などを感じ取ったり引き出したりすることはできません。対して人間は相手とコミュニケーションを取ることで、そういった情報を取得し期待以上のパフォーマンスを提供したり、よりよい提案をすることができます。さらに、訳出に独自のスタイルや表現を磨くことで高い評価や顧客満足を得ることができれば、長期的な仕事につながる可能性が高くなります。
 

まとめ

  • 通訳・翻訳は、日本の国際化や近代化に大きな役割を果たしてきたが、コストと時間を短縮できる自動通訳と自動翻訳が注目を集めている。

  • 自動通訳はAIを使った翻訳精度の高さが特長だが、今の時点では、話者の音声が不明瞭な場合や、非言語情報への対応、文化や社会情勢への理解などの点で通訳者に完全に取って代わることは難しい。今後は自動通訳が対応できる場面がさらに増えていき、自動通訳と通訳者が共存し、必要に応じて使い分ける傾向がさらに進む。

  • 自動翻訳も、自動通訳より技術は進んでいるが、精度や感情の読み取り、専門性などの点で翻訳者の役割はなくならない。自動翻訳の弱点を補うスキルを磨こう。

  • 今後、通訳者・翻訳者が求められるスキルのは、専門知識や、文化・社会情勢への理解を深めること、コミュニケーション能力などがある。

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