制度を活用して『リスキリング』する方法:働きながら受講できる「新しい職業訓練」とは?
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リスキリングとは?
『リスキリング』という言葉は、2018年頃に日本に入ってきましたがその時はまだ研究者や一部の専門業界でのみで、一般の人はほとんど知らない状態でした。コロナ禍という特殊な環境がもとで徐々に認知され始め、一気に拡大したのは2022年。政府が政策キーワードとして取り上げ、岸田首相が「5年で1兆円のリスキリング支援」を表明したことがきっかけで、メディアやビジネスから広まり、同年の「新語・流行語大賞」にもノミネートされたため、一般社会にも急速に普及していきました。まずはこの言葉の意味をきちんと理解するところから始めましょう。
リスキリング(reskilling)とは
リスキリングとは、変化する社会や仕事に対応するために、新たなスキルを学び直すことを指します。特に近年は仕事の内容が大きく変わる中で重要性が高まっています。
仕事の内容が変化する
技術や社会が進化する
変化に合わせて新しい能力を身につける
つまり「今までの延長」ではなく、「新しい分野に適応するための学び直し」である点が特徴です。
リスキリングの具体例
リスキリングは実際の仕事の変化に応じたスキル習得として行われます。異なる分野へ対応するための学び直しという点がポイントです。職種ごとにリスキリングの具体例を挙げてみましょう。
事務職 ⇒データ分析やITツールの活用を学ぶ
製造業 ⇒プログラミングやIoTスキルを習得する
営業職 ⇒デジタルマーケティングを身につける
このように、既存の職種にとらわれず、新しい役割に適応するための行動がリスキリングなのです。
なぜリスキリングが注目されているのか
リスキリングが注目されている背景には、社会構造そのものの変化があります。社会構造の変化に伴って働き方が大きく変わる中で、個人の対応力が重要視されてきているのです。
AIやデジタル技術の急速な進化
従来の仕事が減少・変化する可能性
新しい職種や役割の増加
このような変化していく社会構造の中では、同じスキルだけで働き続けるのではなく、変化に合わせて柔軟に学び続ける姿勢が求められています。
『働きながら学びやすい職業訓練』活用のすゝめ
自分もリスキリングをしよう!と思い立っても、どこから始めればいいのか、何をすればいいのかわからないという方も多いのではないでしょうか。しかも日々の仕事や生活に追われていては、勉強や訓練の時間を取るということがとても難しいというのが現実です。
そんな方にオススメしたいのが、厚生労働省所轄訓練事業の『働きながら学びやすい職業訓練』の活用です。
働きながら学びやすい職業訓練とは
従来の離職者向け職業訓練とは違い、現職者を対象としています。e-ラーニングや夜間土日のスクーリングを組み合わせてあり、働きながら受講できる職業訓練で、スキルアップや正社員化、職種転換を支援する制度です。
この制度がなぜ『リスキリング』や『DX人材』を実現するのに活かせるのか、もう少し詳しく見ていきましょう。
対象となる人
この制度を利用できる対象者は、有期契約で働きながらいろいろな形のキャリアチェンジ、キャリアアップを目指したい人が想定されています。具体的には、① ~ ③の要件を全て満たす方が対象となります。
現在、契約社員/派遣社員/アルバイト・パート等、有期の雇用形態で働いている方、または処遇・待遇がそれらの雇用形態と同等であると認められる方
職種/職業の転換、または正社員化を目指している方
働きながら最後まで学ぶ意思のある方
このように、就職のために学ぶ、今の仕事でスキルアップや就業環境を変えるなどの転職を目指す、のが目的ではなく、「学びなおしてキャリアチェンジしたい」というまさに『リスキリング』をしたい人を対象としている制度です。
プログラムの内容
次にどのような内容の訓練が受けられるのかを、見てみましょう。
▼コース内容(※2026年6月現在の内容です。一部のみ抜粋。)
DX事務・データ活用科(受講期間4ヶ月)
デジタルツールとデータ活用スキルを習得するコース。ITパスポートやMOSなどの資格取得を目指せる訓練内容で、事務職としてITを活用した"次世代型バックオフィス人材"の育成を目的としています。
ITサポート科(受講期間4ヶ月)
IT支援に必要な知識とスキルを習得するコース。CompTIA Tech+やITパスポートなどの資格取得を目指せる訓練内容で、未経験からIT業界への職種転換し、IT機器のユーザーサポートやITインフラの運用、社内ITヘルプデスクなどで活躍できる人材の育成を目的としています。
ITインフラ・クラウド基礎科(受講期間4ヶ月)
ITインフラとクラウドの基礎知識を習得するコース。Linu C Level1やAWS Certified Cloud Practitionerなどの資格取得を目指せる訓練内容で、システムのクラウド運用急増の社会変化に対応し、インフラエンジニアやセキュリティ対策を担う人材の育成を目的としています。
デジタル事務科(受講期間4ヶ月)
オフィスソフトの操作スキルに加え、生成AIやデジタルツールのスキルを習得するコース。ITパスポート試験やMOSの資格を目指せる訓練内容で、AI時代に対応した事務職の育成を目的としています。
デジタル広報・オンラインPR実践科(受講期間5ヶ月~6ヶ月)
Webサイト運用とデジタルマーケティングの知識を習得できるコース。ネットマーケティング検定やウェブ解析士などの資格取得を目指せる訓練内容で、Webを活用し成果につなげるWebマーケティングやサイト運営スタッフ、広報/PR人材の育成を目的としています。
ITエンジニア基礎科(受講期間5ヶ月~6ヶ月)
Python・JAVA・生成AIの基礎を学べるコース。Python3エンジニア認定基礎試験、Javaエンジニアプログラマー ブロンズSなどの資格取得を目指せる訓練内容で、ビジネススキルに加えてIT技術を習得することで、未経験からビジネス力にも通じたITエンジニアの育成を目的としています。
このように、どのコースも、現在持っている経験に、これまでとは違う未経験領域の知識やスキルを新しく学びそして掛け合わせることで、これからの社会にあったキャリアチェンジ、キャリアアップを目指せる人材を育成する内容になっています。すなわち『リスキリング』を目的としていると言えます。そして、新しく学ぶ領域はどれも『IT』です。この制度が『リスキリング』や『DX人材』を目指すために、ピッタリの制度であると言えるのではないでしょうか。
利用の流れ
具体的な申し込みの流れも押さえておきましょう。
働きながら学べるため、手続き等においてもハローワークに足を運ばなくてもよい仕組みになっています。
0. 制度の詳細を確認(規定・申込期限・料金など)し、受講したい講座を検討、選択
1.受講申し込み
2.オンライン面談(選考)
3.選考結果通知
4.受講料支払い(銀行振り込み)
5.受講開始
6.受講継続に向けたサポートを受けながら学習に取り組む
この制度のメリット・デメリット(注意点)
次にこの制度のメリットとデメリット(注意点)をみていきましょう。
利用するかどうかはもちろんですが、受講するコースや時期、タイミング、必要な準備など効果を最大限に出せるようメリットとデメリット(注意点)をしっかり把握して検討するようにしてください。
この制度のメリット
①働きながら学べる
申込から受講まで、オンラインや夜間・休日の時間がメインのプログラムになっていますので、仕事をつづけながら受講できます。収入を維持しながらスキルアップが可能ですので、安心して取り組むことができます。
②未経験分野に挑戦できる
これまでの経験に掛け合わせる、または進化させるために、これまで経験がない職種や領域に未経験からチャレンジできるコース内容になっています。自分で勉強したり、転職でOJTで新しい領域に飛び込むより、スモールステップでリスクも小さくチャレンジすることができます。
③正社員化につながる
習得できる内容は、今まさに社会で需要が高まっている領域の知識やスキルです。これらを身につけることでキャリアの幅が広がり、正社員化を目指す一歩を踏み出すことができます。
④キャリアサポートが受けられる
全受講者がキャリアコンサルタントによるキャリアコンサルティングを受けることができます。受講後のキャリアプランの相談や、不安の軽減、この制度以外に必要な支援へつなげてくれるなどのサポートをしてくれます。
この制度のデメリット(注意点)
①有料である
この制度は無料ではありません。どのコースも一律ですが、5,000円の費用がかかります。行政の制度なので無料だと思われがちですが、気づかず申し込みをしないように気を付けましょう。民間の専門学校に通学するよりは安価ですし、受講に必要なパソコンやWiFiは無料で貸し出してくれます。
②訓練実施機関がコースによって異なる
コースによって、実施受託している機関(受託企業)が違います。申込時に必要な情報や、入力方法、プログラムの進め方などが違いますので、各機関の説明をよく確認してから申し込みましょう。
③募集時期や定員がある
プログラムには受講期間はもちろん、それぞれ募集期間や定員が定められています。ギリギリになってからだと、受けたいコースは募集期間終了や、満席で受付が終了しているといった事態になりかねません。受講を考えている方は、すぐにコース詳細ページを確認しましょう。
④働きながら学びの時間を取らなければならないということ
この制度の「働きながら学べる」ことは、メリットであり、注意点でもあります。仕事でトラブルがあっていつもより疲れている日でも、必要な授業の聴講や、課題に取り組まなければならないかもしれません。そのような事態があっても、目標にむかってがんばれるかどうか、学びの継続が辛い状態になる可能性があることも想定しておきましょう。受講が滞っている人には、継続するための伴奏支援も用意されていますので、うまく活用して乗り切りましょう。
活用イメージ
最後に、実際にどのようなキャリアチェンジができる可能性があるのか、モデルケースを見てみましょう。
派遣事務職からのキャリアチェンジ
対象:派遣で営業事務の仕事をしている人
受講コース:DX事務・データ活用科
習得スキル:デジタルツールとデータ活用
キャリア転換:契約社員として顧客管理フローのDXを行うプロジェクトに参画、成果を出して正社員へ転換。
アルバイトの接客業からのキャリアチェンジ
対象:アルバイトで接客・販売の仕事をしている人
受講コース:ITサポート科
習得スキル:PCトラブル対応スキル、IT支援知識
キャリア転換:紹介予定派遣で、社内ヘルプデスクアシスタントとして入社、実務経験も磨いて、6カ月後正社員へ転換採用。
まとめ
キャリアを自分で作っていく、というのは自分のことながら簡単なことではありません。しかし社会の変化スピードが非常に速くなっている現代において、現状がずっと続く保証はありません。ゆっくりでも、ほんの一歩でも、前に進んでいくことが大事です。
本稿で紹介した制度は、働きながらスキルアップ&キャリアチェンジしたい方にとって、有効な選択肢の一つです。今の環境を変えずに一歩を踏み出せるので、まずは本稿を参考に、自分にあったコースがあるかなど、制度をチェックしてみてはいかがでしょうか。
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