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通訳者へのステップ~「通訳」の仕事をベテランコーディネーターが徹底解説~

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通訳者へのステップ~「通訳」の仕事をベテランコーディネーターが徹底解説~

I.H

I.H
上智大学文学英文科卒。日本コンベンションサービス株式会社にて、外資系企業の通訳者やオリンピックのアテンダントなど語学スタッフのコーディネートを担当、のべ2000人以上の採用に携わる。自身の英語学習経験を活かし、プロの通訳者とJCS通訳テストを開発するなど、語学に関する人材サービス業のスペシャリストとして15年以上勤務。CDA(キャリア・ディベロップメント・アドバイザー)資格および国家資格キャリアコンサルタント資格を取得し、登録スタッフへのキャリアコンサルティングにも従事。

語学が得意で海外文化に興味がある人なら、一度は「通訳」という仕事に興味を持ったことがあるのではないでしょうか?私も大昔はその一人でしたが、早々に現実にぶつかって玉砕したことがあります。「語学力が高ければ(会話に不自由しなければ)通訳者になれるのではないか」と思うのが通訳という仕事に対する一般的な認識かと思います。
実際には、語学力だけではなく専門の技術と膨大な知識を身につけ、常に勉強し続けるエネルギーとセンスを持つ必要がある、非常にハードなお仕事です。しかし恐れることなかれ、通訳者を目指すには何が必要なのか、どうすればいいのか?をしっかり理解すれば道は開けます。本記事では、英語の社内通訳者をベースに「通訳」という仕事を正しく理解し、ゴールをしっかり見据えて一歩を踏み出していただくための基礎を解説していきます。

CONTENTS

通訳者とは?正しく理解しよう

仕事内容


通訳者の仕事内容は何でしょう?端的に言えば、話者の話している言葉を別の言語に変換し相手方に伝える、ということです。もし日本語と英語が言葉の構造や語順が同じで、単語も1対1で訳語となるものがあったとしたら、さほど難しくはありません。単語を覚えてしまいさえすれば、聞いたままそのまま置き換えていくだけで「通訳」となり、早々に人間ではなく100%機械ができる仕事になっていたと思います。

しかし、実際は日本語と英語は構造や語順の違いがあるだけではなく、お互いに訳語がある単語であっても使い方次第で意味やニュアンスが変わってしまいます。また話者が母国語として文化的背景などを踏まえ自然に話せるネイティブスピーカーとは限りません。主語を省略できる言語の場合、通訳者が主語を補うこともあります。通訳の仕事とは、そういった異文化の仲介者として言葉の壁を乗り越えて、"話者の話している内容を、別の言語で相手が理解できるように伝える"ことだと言えるでしょう。

具体的には、企業内または企業間での打合せや、社内外の会議、セミナーや講演会、商談、面談などで日本語から英語、または英語から日本語に言葉を変えて伝えるのが仕事内容となります。通訳形式と時間や規模によって、通訳する環境や機材、訳出方向、何名体制で通訳するか、などが変わります。例えば、英語話者と日本語話者の双方に複数の人が参加し、同時通訳機材や機能を使う同時通訳形式だった場合、最低でも2名の通訳者をアサインし、15分ずつ交代で通訳を行います。複数の人が理解できる精度の高い同時通訳を行うのはとても難しいため、プロの通訳者でも連続15分が限界と言われています。


働き方


通訳者の働き方には、大まかに分けて「社内通訳者(インハウス)」と「フリーランス通訳者」の2つがあり、契約方法、報酬のもらい方、働く期間、仕事の範囲に違いがあります。社内通訳者は、派遣社員や契約社員など「雇用契約」で、業務に従事する時間数や期間に対して対価として「給与報酬」をもらいます。「通訳以外の業務」も場合によっては発生します。一方でフリーランス通訳者は、個人事業主として「業務委託契約」で提供した成果物(=通訳パフォーマンス)に対して対価として「業務委託費」をもらいます。依頼された業務内容をその時に限り実施するので「通訳業務のみ」が基本的には業務となります。

具体的な業務内容としては、企業内での打合せや会議の通訳、セミナーや講演会、シンポジウム等で演者の話す内容を聞き手に伝える通訳、展示会で商談に立ち会う通訳などは、社内通訳者でもフリーランス通訳者でも活躍の場があります。一方、国際会議や政府関係者の会談などは、拘束時間が読みづらく、間違いがあってはいけない場面も多いので事前準備にかかる労力や時間、知識経験を求めるため、時間対価ではないフリーランス通訳者でのみアサインされます。

一般的にはまずは社内通訳者として、通訳以外の仕事もしながら通訳技術を磨き、フリーランス通訳者へ転向します。社内通訳者は時間拘束ですので、通訳業務をしていない時間も含めて、勤務時間に応じて給与報酬がもらえ、安定して働けます。繰り返し同じ会議を担当したり、合間に翻訳業務に携わったり、社内からのフィードバックを得ることで落ち着いてスキルアップができます。ただし、通訳業務以外を依頼されたり、"業務命令"には従う義務があり、決められた時間に勤務しなければなりません。

一方、フリーランス通訳者は、基本的に委託業務を遂行すればよく、通訳の仕事が発生する時に通訳の仕事をすればいいので、時間のみで拘束はされません。時間単位ではなく仕事単位で請けますので、1日にいくつも仕事を請けることもできますし、仕事を請けないことも自分で決められて仕事によって請ける請けないを決められますので、時間拘束という意味ではかなり柔軟な働き方ができます。しかし毎回違うところで初めての場で通訳をしなければなりません。また「次」がある保証がないので、高い通訳技術と対応力にてクライアントを満足させリピートをもらう必要があります。その分、報酬は「給与」でもらうより高くなりますが、移動交通費や社会保険などの"経費"を委託報酬の中から捻出しなければなりませんし、資料を読み込むなどの事前準備は、報酬が発生する業務時間としてもらうことはできません。

どちらがいいというよりは、どういう働き方をしたいかどちらが向いているかで目指す方向を決めるとよいと思います。


募集要件


フリーランス通訳は雇用契約ではないため、募集要件、つまりは求人というものはありません。この項目では社内通訳の募集要件について解説します。

社内通訳の求人では多くの場合、その業務を行うために必要なスキルと実務経験を求められます。主には通訳形式を指定した実務経験が提示されています。担当業務が逐次通訳形式なら「逐次通訳の実務経験1年以上」といった形です。実務経験の他にも、募集企業と同業種の通訳経験や業界知識、同時通訳の場合はパナガイドなどの通訳専用機材やWeb会議ツールの通訳機能を使いこなすスキルを要件とすることもあります。

企業で働く通訳専門職で同時通訳レベルになると、完全未経験OKという募集はほとんどありません。未経験の場合は、必要なスキルと技術を身につけ、始めは翻訳メインで通訳が混じるものや、逐次通訳業務を含む英文事務などの仕事に就いて少しでも実務経験を積むことをオススメします。

ところで通訳の募集要件には「語学力」、例えば「英語力:ビジネスレベル以上(TOEIC900点以上)」といった要件は記載されていないことが多いのですが、何故でしょうか?次の章では通訳者に必要な語学力について解説していきます。


社内通訳者に必要な英語力はどのくらいか?

資格スコアならTOEIC900点以上


通訳者に必要な語学力について、ここでは英語を例に解説します。前章で投げかけた「通訳者の募集要件に英語力についての要件記載がないのは何故か?」という問いに対しての答えは「通訳という仕事においては"英語ができる"ことは当たり前だから」です。もし敢えて要件化して具体的に書くとすると「TOEIC900点以上(本当は満点欲しいところ)、または英検1級の英語力」という要件になります。

参考までに日本コンベンションサービス株式会社で英語通訳者として、社内通訳者用の通訳技術テストを受験された方々の受験データを見てみても、92%がTOEIC900点以上となっています。(当社調べ)


英語力は前提条件


このように英語通訳者にとって、英語力が高いことは必要要件ではなく前提条件なので、募集要件には記載がありません。英語が話せる(英語を使って仕事をしている)スキルを持っているだけでも素晴らしいことなのですが、通訳ができるスキルとは異なります。通訳に必要なスキルに関しては「3.通訳技術とは何か?どうやって習得すればいいのか?」で後述いたします。

TOEIC900点以上を取得するには、単語力なら8,000語~10,000語*程度必要だと言われています。また日常生活や仕事に関わる英語力を測るテストですので、専門的な単語や業界独特の言い回しは出てきません。10,000語も必要なの?!と思うかもしれませんが、一般的に、ネイティブスピーカーが持つ語彙数は20,000~35,000語*。900点レベルでも語彙数はネイティブの半分以下でいいわけです。

ちなみに一から10,000語も覚える必要はありません。受験校のレベルにもよりますが、大学受験に必要な英単語数は4,000語~6,000語*と言われていますので、大学受験の勉強をした人であれば、必要数の半分以上は学生時代に習得していますから、一般的な社会人として使う単語を中心に足りない部分を補えばよいでしょう。

*インターネット調べ、出典

・駿台予備校コラム

https://www2.sundai.ac.jp/column/benkyoho/english-study-methods/

・オンライン英語学習LECブログ

https://englishosaru-officialsite.co.jp/englishosarublog/toeic-900-word/


単語力と表現力がポイント


では、通訳者として必要な英語力とはなんでしょうか?通訳者は自分の対応分野を持っています。いくら通訳者でも全ての業界や業種の専門用語や知識を2言語で持つことはできません。日本人が日本語で話すにしても、業界や業種が違えば話が通じないことがあるのと同じことです。

通訳者は自分の対応分野のビジネスパーソンが話す内容を、日本語と英語の両言語で理解・表現することができないといけませんから、対応分野の単語や表現を含めた英語力が求められます。そして単語や表現というのは日々新しいものが発生しますので、常にアップデートしていく必要があります。常に勉強し続けることも含めて、通訳者に必要な語学力ということになるでしょう。


通訳技術とは何か?どうやって習得すればいいのか?

通訳技術とは


通訳技術は"話者の話している内容を、別の言語で相手が理解できるように伝える"ためのテクニックです。特に言語構造や語順が全く違う日本語と英語の通訳を行うには、聞いたものを頭の中で翻訳して口から出す、だけでは追いつきません。伝えるための言語表現を効率的に再構成する、「聴き方」「メモの取り方」「頭の中の整理の仕方」「表現方法」などの手法が通訳技術です。


試しに社内会議の内容やニュースを日本語⇒日本語、英語⇒英語で聞いたまま、同じ言語でなぞって同時に話してみてください。つっかえずに話すことができるでしょうか?言語変換なしでただ聞いたままを口から出すだけでも、意外に難しいものです。通訳者はこの作業を日本語⇔英語で言語変換もしながら行うとイメージするとその難しさをイメージできるかと思います。通訳技術はその困難をテクニックで補うものなのです。


通訳技術の習得


通訳技術を習得するには、専門的な訓練を受けるのが近道です。通訳専門学校や大学の通訳コースなどがそういった機関に該当します。通訳者の多くは、専門的な訓練を受けてその技術を習得しています。もちろん、専門的な訓練を受けていなくても通訳者として活躍されている方も沢山いますが、ビジネス通訳としてはパフォーマンスが伸び悩む傾向にあるように思います。


歴史ある大手通訳学校は、蓄積されたノウハウがあるので効率的に技術習得ができ、同級生と切磋琢磨できるモチベーションを維持しやすい環境で、講師陣を含めて必要な情報が得やすいので、費用と時間が許せば通学を検討してみると良いでしょう。ただ必ずしも、費用も時間も負担の大きい大手通訳学校でなくても技術習得は可能です。インターネットサービスがこれだけ普及している現代であれば、通訳技術がどういうものかを理解すれば、必要な学習素材や習得方法に関する情報を見つけて活用したり、小規模の通訳学校やプログラムで自分にあったものを見つけることも可能です。


自分でも通訳者になれる?

通訳者の英語力背景は


多くの通訳者はどのようにして英語力を習得したのでしょうか?やはり帰国子女の方が多いのでは?と思う方もいるのではないでしょうか。確かに最も言語習得に適した年齢期(7歳~10歳)に英語圏で生活した方は脳が英語学習の素地を取得できているかもしれません。しかしあくまで素地があるだけであって、本人が努力しなければ高い言語力は身につきません。日本人の中でも国語力に差があるのと同じです。


皆さんは日本語能力検定1級の問題を見たことはありますでしょうか?日本企業で日本語が公用語の環境で、日本人と同等のビジネスコミュニケーションスキルが必要なポジションで働くには、日本語能力試験1級取得は必須ともいえる要件ですが、常用漢字ではない漢字を含む語彙問題もあり、日本人でもわからない人はいるだろうなと思う問題もあります。


学校での国語の勉強はいうまでもなく、本や新聞をたくさん読み積極的に語彙を増やさなければ合格できないかもしれません。
とはいえ、日本に居ながらにして英語を勉強するのと、海外で勉強するのとでは効率は違うと思います。帰国子女ではない通訳者の方も大人になってから一定期間海外で勉強されている方が多いです。通訳者は英語だけでなく日本語レベルも高くなければなりませんので、学童期/生徒期までは日本語をしっかり勉強しつつ、英語はできる範囲の習得努力の後、海外留学やワーキングホリデーなどで海外滞在期間に集中的に英語力を高めるのも決して不利ではないと思います。


通訳者の前歴


通訳者が通訳者になる前は、どういう経歴なのでしょうか。10年以上、通訳者を含む求職者の経歴を何千件と見てきて、社内通訳者の場合、特定の職種や業種での経歴が通訳者につながりやすいということはないと感じています。ある程度言えるのは「一般事業会社で英語を使うオフィスワーク業務の経験がある」ということです。

職種は秘書、貿易事務、購買、営業など様々ですが、日本語のみの環境でのみお仕事をしてきた方がいきなり通訳者になっている、という経歴はあまり見たことがありません。通訳者が活躍する機会が多いのはビジネスの場ですので、ビジネスの現場経験(実際の仕事経験)を日本語英語の両方で経験しておく、ということが必要だからです。こればかりは、机上で勉強しても身につくものではありませんので、経歴として取り入れた方がよいでしょう。


通訳者になれたきっかけ


実務経験がないと応募できないことが多い、通訳業務をメインとする通訳者にキャリアチェンジするにどうしたらよいですか?と、求職者の方から聞かれることがあります。とても専門的な職業であるにも関わらず、ビジネス通訳は特に資格があるわけではないので確実なキャリアマップがないのです。

通訳者となっている方のお話を聞くと、たまたま業務上、通訳のようなことをする必要が出てきたとか、秘書職がメインだったが通訳的なことも少し入る仕事に就けたことからとか、運よく現業で未経験から通訳業務に携わることができた方もいらっしゃいます。しかし、やはり一番多いのは、そのようなチャンスのある仕事に就くことを狙いつつ、通訳専門学校や大学を修了し、技術をきちんと習得したことで、通訳業務に就くことができた、というパターンです。

当社でも実務経験が浅くても、同時通訳技術まで身につけられた方で当社の通訳技術テストの基準点をクリアされていれば、通訳職のご紹介をさせていただくことがあります。まずはしっかりスキルエビデンスを取得することが近道だと思います。


訓練期間


通訳技術の訓練期間は、もちろん人によって進み具合も違いますし、専門学校では始めにテストをして入れるクラスが決まりますので、どのレベルのクラスからスタートできるかでも違ってきます。レベルチェックテストで、通訳コースの入門科からスタートして同時通訳訓練修了まで早い方でおおよそ2年くらいかかります。


費用も時間もかかりますし、何よりビジネスの場で英語を使う環境を維持することもスキルアップの一つですので、働きながら通学される方が多く、途中休学期間を入れて通算10年、という方もいらっしゃいます。いずれにしても、一朝一夕に習得できるものではないので年単位の勉強期間が必要であることは知っておくとよいでしょう。


勉強が好きな人、言葉が大好きな人は是非チャレンジを

通訳者の方に「通訳」というお仕事について聞くと、一生勉強し続ける職業である、という答えが返ってきます。同じ英語を母国語とする方でも、国によって表現方法が違ったりしますし、聞き手が多国籍の方々の場合、人によっては理解できないこともあります。どんな話者の言葉でも、全員が理解できるように完璧に訳す、ということはまず不可能なのです。

また、日々新しい技術や言葉も生み出されますので、それらをアップデートする必要もあります。そのためにも、自分が知らないことや新しい言葉・知識を調べ学ぶことを厭わず、楽しめるとよいでしょう。

性格的にも向き不向きがあります。あくまで話者が主役ですから、自分が目立ちたい方や、一瞬の判断で出したパフォーマンスが、その会議やミーティング、プロジェクトの成否を決めるというプレッシャーに耐えられない方は向いていません。

好奇心が旺盛で、知らないことを知ること(勉強)を楽しめる方、縁の下の力持ちとして自分の仕事が誰かの成功の役に立つことにやりがいを感じる方、そして何より言葉が好きな方に向いているお仕事です。是非チャレンジしてみていただきたいと思います。


まとめ

                                        

  1. 通訳の仕事は「話者の話を、相手が理解できるように別の言語で表現し伝えること」

  2. 英語が話せる=通訳技術ではない

  3. TOEIC900点レベルの英語力が前提

  4. まずは英語を使う仕事をしながら、通訳技術を身につけよう

  5. 言葉が大好き、一生勉強を楽しめる縁の下の力持ちさんに向いているお仕事

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